怪我・病気など様々な理由から体に障害を持つ人に対して、自立した日常生活や、より良い生活を送るため医学的リハビリテーションを行う専門職として活躍する理学療法士(PT)は、国家資格を持つ有資格者です。
理学療法士国家試験合格者は、2016年3月末時点で述べ合格者数役13万9000人。国家試験の合格率は平成28年度で74.1パーセント(合格者数9272人)となっています。
主に病院やリハビリ施設、クリニック、介護施設などで勤務することが多いですが、最近ではヘルスケア事業や介護予防事業などの現場、さらにはプロスポーツチームなど活躍の場が広がっています。
高齢化などにより、リハビリを必要とする人が増えていることなどを受け、非常にニーズの高い仕事とはいえ、社会的にもしっかりとした地位が確立されている仕事であることから有資格者も増えています。
そのため、理学療法士の転職や就職は今後厳しくなっていく可能性もあることは覚えておきましょう。
理学療法士(PT)の主な仕事内容と役割
理学療法士(PT)は、医療施設や老人ホームなどの福祉施設でのニーズが非常に高い仕事です。
英語で「Physical Therapist(フィジカルセラピスト)」と言われる理学療法士の専門領域は「歩く」「立つ」「座る」「寝返りをうつ」という基本的な体の機能回復のサポート。
同じリハビリ関連の国家資格「作業療法士」や「言語聴覚士」との違いは、身体機能の回復を目的としたリハビリであるという点です。
理学療法プログラムの作成
理学療法士(PT)の大切な仕事は、リハビリをする場で指導するだけではありません。 患者さんの身体状況をしっかりと把握し、最適な目標設定や治療・予防に向けたプログラムを作成するのも理学療法士の仕事です。
運動療法指導
介護予防や治療を目的として、転倒予防や腰痛改善体操、筋力・柔軟性トレーニング、バランス能力の改善などを目的とした運動療法を患者さんの血はビリパートナーとして指導していきます。
身体機能・痛みの評価・分析
患者さんが適切なリハビリを行うために、理学療法士は関節の可動域や手の筋力検査、動作の分析など様々な手法を使いながら身体機能と痛みの評価・分析を行います。
この結果をもとに、理学療法プログラムを作成しますので、しっかりとした知識を持って評価・分析を行うことが求められています。
物理療法
物理療法とは、鎮痛や麻痺の回復を目的としたマッサージや電気療法などの物理的治療を指します。
こうした手法も用いながら、患者さんの自立に向けたサポートを行なっていきます。
自立生活サポート
実際のリハビリトレーニングに関するプログラム作成や指導だけでなく、理学療法士の仕事は住宅改修・車椅子などの福祉用具の剪定・使い方のアドバイスも含まれています。
地域や自宅などで患者さんが望む生活・自立ある生活を送れるよう、環境づくりや社会参加を支えるのも、理学療法士の大切な役割です。
理学療法士の1日のスケジュール
理学療法士の1日は、患者さんのリハビリに加えて医師や看護師、介護スタッフなど他職種の人との連携を図る時間も大切です。
朝出勤してから退社するまでの代表的な理学療法士の1日をご紹介しましょう。
<医療機関に勤務する理学療法士の場合>
8:30 | 出勤、他職種スタッフとのミーティング |
9:00 | リハビリ室での歩行訓練などのリハビリ指導 |
10:30 | 病室で入院患者さんの基本動作訓練(寝起き・起き上がり・立ち上がりなど) |
12:00 | お昼休憩 |
13:00 | リハビリ室でのリハビリ指導 |
15:00 | 医師や看護師とともに、病棟の入院患者を回診、状態を把握し、リハビリ内容を検討・相談 |
17:00 | 回診内容を受けてリハビリプランの作成 |
18:00 | リハビリ内容の記録 |
19:00 | 帰宅 |
このように、病院で勤務する理学療法士の場合、1日の大部分がリハビリ指導となりますが、リハビリプランの作成や医師の意見を聞くことも重要な業務内容となってきます。
また、場合によってはケアマネージャーなどへ退院後の生活についてアドバイスを行うことも業務に入ってきます。
理学療法士(PT)が働く職場と役割
理学療法士(PT)は赤ちゃんからお年寄りまで、人生のあらゆる場面でより良い生活が維持できるようサポートする大切な存在です。
赤ちゃんの場合は発達支援、子供の場合は就学支援、また成人・社会人は勤労支援や生活習慣病の予防、高齢者になれば介護予防や自立支援など年代や生活環境によりリハビリの内容は大きく異なってきます。
以下は、理学療法士が活躍している職場と
主な役割
の一例です。
医療サービス
主な職場
- 病院
- 診療所
主な役割
回復期に当たる患者さんの機能回復訓練、生活指導など
保健サービス
主な職場
介護予防、特定保健指導
主な役割
健康づくりや筋力維持のための指導など
介護保険サービス
主な職場
- 通所リハビリセンター
- 訪問看護・介護事業所
- 老人保健施設
- デイサービスなど
主な役割
利用者へのリハビリ指導、住宅改修や福祉用具のアドバイスなど
行政サービス
主な職場
- 市・区役所
- 保健所
- 保健センターなど
主な役割
健康情報の発信、介護予防やヘルスケアイベントの実施など
福祉サービス
主な職場
- 障害者福祉センター
- 障害者(児)通所・入園施設
- 特別支援学校・学級など
主な役割
社会参加、就業、就学支援のためのリハビリ指導など
スポーツサポート
主な職場
- 障害者スポーツ
- スポーツ障害予防など
主な役割
スポーツ選手の体のケア・リハビリ指導、障害者スポーツのサポートなど
その他
主な職場
- 大学院
- 研究所
- 理学療法関連企業など
主な役割
リハビリプログラムの研究、リハビリ機器の研究開発など
理学療法士の年収・給料・賞与
理学療法士の平均年収は404万円
病院以外にも介護現場など様々な場所で活躍する理学療法士。
平成27年の「賃金構造基本統計調査」によれば理学療法士、作業療法士の平均年収は404万円、平均月収が28万円となっています。
男女別に見ると男性の方が高い傾向にあり、年収の男性平均は416万円、女性平均は391万円となっています。
平成20年以降、平成27年度は初めて平均年収が400万円を超えていますが、平均して390万円以上が年収といえるでしょう。
2)ボーナスは30~60万円が相場
同じく、平成27年度「賃金構造基本統計調査」を見てみると、理学療法士の平均的なボーナス額は以下の通りとなっています。
年齢が上がるごとにボーナス額も上がる傾向にあり、55~59歳では男女ともに100万円を超えています。
- 20~24歳:男性33.1万円、女性38.9万円
- 25~29歳:男性69.6万円、女性65.0万円
- 30~34歳:男性71.9万円、女性66.0万円
- 35~39歳:男性76.1万円、女性68.3万円
- 40~44歳:男性74.0万円、女性20.9万円
- 45~49歳:男性82.2万円、女性81.4万円
- 50~54歳:男性88.3万円、女性94.0万円
- 55~59歳:男性1125.8万円、女性112.0万円
平成27年度「賃金構造基本統計調査」より
理学療法士(PT)を取り巻く環境と将来性
専門性を高めることで広がる将来性リハビリを通じてたくさんの患者さんとである理学療法士は、患者さんの生きる希望を支え応援する仕事です。
必要とされる場の選択肢は幅広く、高齢化の進展に伴いリハビリの需要はますます高まっていくことが予想されています。
また、理学療法士の国家資格を取得したのちも、スキルアップの機会は多く、知識や技術が深まることでより一層活躍の場が広がるといえるでしょう。
理学療法士は、近年国家資格取得者も増えているため資格を取ったから就職先が簡単に見つかるとは言えません。
かつてよりも就職状況が厳しいとも言われており、資格を取得した後も作業療法士の資格をさらに取得したり、勉強会や講習会に参加しながら業務知識を研鑽していくなどの努力が必要です。
逆を言えば、より良いリハビリを追求して、常に工夫と学びの姿勢を忘れなければ、ニーズはあるわけですから理学療法士として仕事を続けていくことは十分に可能ですし、社会からも必要とされているといえます。
女性でも働きやすい職場環境
理学療法士の職場の多くは病院や老人保健施設など。こうした職場は女性も多く、産休や育休制度などの待遇面で女性を考えた制度を取り入れている職場が少なくありません。
結婚・出産・子育てなどライフステージによって、働き方を大きく変える可能性のある女性にとって、こうした職場環境は非常に働きやすく継続しやすいとも言えます。
また、子育てを理由に離職したとしても、パート求人は多いですから、家庭と仕事の両立を離職ごに図ることも比較的容易といえるでしょう。
理学療法士(PT)の求人・転職状況に関して
簡単ではなくなってきた理学療法士の就職
理学療法士としての仕事を探している方は、まずは「専門性が高いから就職しやすい」という考えを改める必要があるかもしれません。
というのも、国家資格であること、社会的認知度の高さ、安定性などを理由に理学療法士を目指している人が増えてきているという実態があるから。
求人は多く出されていますが、吟味して特定の分野で就職したいというこだわりを持つ方は、根気よく就職・転職先を探さなければならない可能性も皆無ではありません。
広がりつつある理学療法士の就職先
理学療法士の有資格者数が増えているのは事実ですが、理学療法士の就職先は「病院」や「介護施設」以外にも近年広がってきています。
例えば最近注目されているのが、発達障害などの分野での理学療法士の活躍です。 「発達領域」と呼ばれるこの分野は、障がいを持って生まれた子どもの成長に寄り添い、リハビリを行っていく分野です。
筋ジストロフィーや重症心身障がいをはじめとし、様々な症状のある発達領域では理学療法士の専門性と患者さんに寄り添い、臨機応変に対応していく人間力が求められています。
物理的治療法にとらわれず、作業療法などの分野を取り入れていく必要もあることから、より高い専門性を生かせる分野かもしれません。
専門性を高めることでフィールドが広がる可能性も
理学療法士は、あくまでもケアマネージャーのように業務独占資格ではありません。
リハビリサポートを看護師や介護スタッフが行うことももちろん法律上OKですから、専門家としての知識をしっかりと活かしていかないと理学療法士だから一生安定とは言えません。
そういった意味でも、理学療法士だからこそできるリハビリサポートとは何かを考え、追求していくことが何よりもこれからの理学療法士に求められています。
裏を返せば、新たな可能性を見出すこともできますし、活躍フィールドはさらに広がっていく可能性がある仕事といえるでしょう。
まとめ:待遇・環境も良い理学療法士は今後競争率が高まる可能性も
高い専門性を持ち、患者さんの回復や生活を支える理学療法士という仕事は、とてもやりがいがある仕事です。
また、より良いリハビリを目指し、リハビリ専門家としての国家資格として社会的認知度が高く、作業療法士や言語聴覚士の資格を一緒に保有している人もいます。
女性にも働きやすく、安定して仕事を続けられるイメージの強い理学療法士は、近年資格取得者も増えている業種であるため、就職はかつてより難しくなってきたと言えるかもしれません。
けれど、専門性の高い国家資格だからこそ、現場からのニーズは高いですし、高齢化に伴いリハビリ分野での専門スタッフは今後さらに求められていくと予想されます。
競争率が高い中で、求められる理学療法士となるためにも、常に勉強・チャレンジすることを忘れないことが理学療法士として仕事をしていく上で大切です。