ケアマネージャーとは、要介護認定を受けた方に対して最適な介護プラン(ケアプラン)を作成・提案する仕事です。
正式名称を「介護支援専門員」といい、介護制度、地域の介護施設情報を幅広く知っているケアマネージャーは在宅介護生活者の暮らしを支える大切な存在です。
ケアマネージャーになるには各都道府県が実施している「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格しなければなりません。
受験資格は看護師・保健師・理学療法士・社会福祉士などの国家資格取得者のうち5年以上・900日の実務経験が必要です。
国家資格を持っていない場合は、老人福祉施設や訪問介護事業所などで5~10年の実務経験があれば受験資格がありますから、キャリアアップの一環としてケアマネージャーを取得する方も少なくありません。
ケアマネージャー試験の受験者数は、平成27年で13万4539人。合格率は15.6パーセントとなっています。
合格者の内訳として最も多いのが介護福祉士で1万3204人。次いで多いのが看護師・准看護師で2392人となっています。
※厚生労働省「第18回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について」より
ケアマネージャーの人数自体が飽和傾向にあることから合格率は介護保険制度開設以来年々減少傾向になっており、決して資格取得は簡単ではありません。
しかしながら、仕事をしながら資格取得を目指す方も多く、長い道のりかもしれませんが、チャレンジする価値ある資格と言えるでしょう。
ケアマネージャーの主な仕事内容と役割
ケアマネージャーの仕事は簡単に言うと、利用者の望む生活を実現するためにケアプランを作成し関係機関との調整を行いながらスムーズに介護保険サービス利用をサポートする仕事です。
ケアマネージャーの主な業務と概要は、利用者が介護認定を受けてから介護保険サービスを利用するまでをサポートする仕事です。大まかな流れとともに仕事内容を整理すると、以下の通りとなります。
要介護認定申請の代行
介護保険サービスを利用するには、利用希望者が各自治体から要介護認定を受けていなければなりません。
そのため、ケアマネージャーは市町村からの委託により要介護者の自宅を訪問・健康状態や必要な介護の内容などを確認し、介護認定申請の代行業務を行います。
要介護者や家族からのヒアリング
介護認定が無事に降りた後は、介護保険サービス利用希望者や家族に対して、最適な介護保険サービスを利用するためのケアプランを作成します。
ケアプラン作成にあたり、事前に要介護者や家族から望む生活や困っていること、普段の生活、心身の状況などをじっくりとヒアリングします。
介護サービス計画(ケアプラン)の作成
要介護者・家族からのヒアリングの後、ケアマネージャーは希望を反映させながら介護サービス計画(ケアプラン)を作成します。
このケアプランは、在宅介護生活者を支える大切なプランとなりますから、ケアマネージャーの腕の見せ所。豊富な知識をもとに、ぴったりのケアプランを考えていきます。
また、介護保険サービス利用開始後も、サービスの利用状況や心身の状況・家庭環境などを定期的にチェックし、ケアプランの見直しを継続的に行っていきます。
介護施設・医療機関・行政などとの調整
利用者が介護サービスをスムーズに利用できるよう、また、利用者の生活環境や性格・介護度にあった介護サービス利用となるように、サービス開始にあたって介護施設などとの調整を行うのもケアマネージャーの仕事の一つです。
そのため、ケアマネージャーには高い交渉力や、ネットワーク力、コミュニケーション能力が求められます。
介護保険給付管理
介護保険サービス利用開始後は、支給限度額を確認しながら利用者が介護保険サービスを利用した分の利用者負担額を計算します。
また、サービス利用票を作成して、給付管理表の作成や提出なども必要となってきます。
車椅子や介護ベッドなどの福祉用具レンタル、自宅の住宅改修など介護サービス利用以外にも介護保険が使える場面は多いですから、こうした一つ一つの内容をチェックしていくことが求められています。
ケアマネージャーの1日のスケジュール
ケアマネージャーは利用者の自宅を訪問し、サービスの利用状況確認やヒアリングなどを行うだけでなく、介護施設や行政などとの調整業務もあるため、とても忙しい1日を過ごしています。
以下は、居宅介護支援事業所に勤務するケアマネージャーの1日のスケジュール例です。
8:30 | 出勤・朝礼 |
8:45 | メールチェック、午後のサービス担当者会議のための資料準備・電話対応など |
10:00 | 介護サービスを初めて利用したい方の自宅を訪問。要介護認定申請のためのヒアリング |
12:00 | 外出先で昼食 |
13:00 | 福祉用具のレンタル業者とともに車椅子利用希望者の自宅を訪問 |
15:00 | 利用者宅へのモニタリング訪問 |
16:00 | 市役所でサービス担当者会議に参加、利用者のケアプランを検討 |
17:30 | 事業所に戻って事務作業、電話応対など |
18:30 | 帰宅 |
介護事業経営実態調査によれば、2011年のケアマネージャー(常勤)一人当たりの担当者数は26.8人。
1ヶ月でこれだけの担当人数を抱えているため、ケアマネージャーは分刻みで忙しい時間を過ごす方も多いです。
そのため、ケアマネージャーの1日は、利用者の自宅訪問や会議が多く、日中事務作業を行う時間がなかなか取れないことも。 また、月末は介護保険給付請求書類を作成しなくてはならないため、残業や自宅作業をされる方もいらっしゃいます。
フットワーク軽く、関係者間を行き来して、実務的な事務処理も行う仕事ですから、ケアマネージャーには高いコミュニケーション能力や共感力、事務処理能力などが専門知識に加えて必要となってきます。
ケアマネージャーが働く職場と役割
ケアマネージャーは大きく分けて在宅で暮らす要介護者を支える「居宅ケアマネ」と、特別養護老人ホームなど入所型施設に暮らす人を支える「施設ケアマネ」に分けられます。
独立して働く方も多くいらっしゃいますが、多くが病院や居宅介護支援事業所、地域包括ケアセンターなどに勤務し働くのが一般的。
主な職場とそれぞれの役割をまとめてみましょう。
居宅介護支援事業所
要介護認定を受け、介護保険サービスを利用する際に真っ先に向かうのが、居宅介護支援事業所です。
居宅介護支援事業所では、自宅で介護サービスを利用する人のフルサポートを行う事業所。
ケアマネージャーは現場の声を聞きながら、一人一人の担当者にあったケアプラン作成や要介護認定申請、サービス利用の手続き、利用後の相談などを行います。
介護保険施設(介護老人保健施設・特別養護老人ホーム・介護療養型医療施設)
いわゆる「施設ケアマネ」と呼ばれるケアマネージャーの多くが介護保険施設で活躍しています。
施設で暮らしている要介護者の要介護認定の更新や生活相談、介護計画の作成などが主な業務です。施設生活を円滑にするための調整役として活躍が期待されています。
地域包括支援センター
市町村など各自治体が設置している地域包括支援センターは、地域に暮らす人たちの生活をワンストップでサポートする場所です。
そのため、介護全般に関する相談も多く寄せられ、ケアマネージャーは利用者と介護保険サービスの橋渡し役としての役割を担っています。
主な業務内容は居宅介護支援事業所とそれほど変わりませんが、要介護や要支援になる可能性が高い方への介護予防の働きかけを行っている点が異なる点の一つ。
また、介護サービス利用の最初の窓口として、高齢者のためのよろず相談所のような役割も担っていますから、適切に利用者の相談内容を判断し、必要があれば各種介護施設へと橋渡ししていく力量も求められています。
その他
最近では、居宅介護支援事業所や介護保険施設、地域包括支援センター以外にもケアマネージャーの活躍の場は広がっています。
例えば住宅型有料老人ホームでは入居者が介護サービスを利用する場合、在宅介護サービスを利用することとなるため、ケアマネージャーの存在が不可欠です。
また、民間の保険会社では介護関連商品を打ち出すところも増えてきており、保険契約を締結したい顧客に対して、専門的な知識をバックボーンに説明できるケアマネージャーが求められつつあります。
ケアマネージャーの年収・給料・賞与
ケアマネージャーの年収は平均370万円
ケアマネージャーの給与は「平成27年賃金構造基本統計調査」によれば平均月額給与は26.1万円、年間賞与額は56.7万円、平均年収は370万円ほどとなっています。
ただし、ケアマネージャーは正規職員として、常勤として働く方法以外にもパート勤務としての働き方があるため雇用形態により給与は大きく変わります。
事業所に勤務している人と独立して活躍するケアマネージャーとでは状況も異なりますから収入に差があるのは当然。
どんな働き方がしたいのか、どの程度の年収が必要かを考えて働く場・働き方を考えていきましょう。
年齢が上がっても変わらないケアマネージャーの年収
他の介護関連職種と比べても、比較的年収が高いケアマネージャーですが、年齢が上がったとしてもその年収はあまり変わらないという点を忘れてはいけません。
一般的な年齢別のケアマネージャーの年収は以下の通り。
- 20~24歳:男性338万円、女性289万円
- 30~34歳:男性362万円、女性329万円
- 40~44歳:男性417万円、女性362万円
- 50~54歳:男性431万円、女性382万円
- 60~64歳:男性342万円、女性335万円
- 全世代平均:男性396万円、女性361万円
※平成27年度賃金構造基本統計調査より
50代で年収が最も高くなるとはいえ、60代になればその年収は下がる傾向にありますし、20代と50代で最大100万円程度の年収差がある以外は、年齢での違いはほとんどありません。
長く仕事を続けるにあたって、昇給などがあまり期待できない点は注意しておきましょう。
ケアマネージャーを取り巻く環境と将来性
ケアマネージャーを取り巻く環境
介護保険制度のスペシャリストとしての活躍が求められるケアマネージャー。
介護サービス利用者の増加が見込まれている中で、その活躍の場はますます広がってきていると言えます。
しかしながら、介護保険制度は現状5年に1回の制度改正が行われていますので、その度に介護保険制度の変更内容を把握していかなければなりません。
ケアマネージャーの将来性
団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年を目前としている今、介護ビジネスは拡大傾向にあります。
そのため、介護保険サービスと高齢者をつなぐケアマネージャーの需要は決してなくなることはありません。
専門性の高い職種であること、ケアマネージャー人口が制度開設から年数が経ち増えてきたことを受け、ケアマネージャー試験の難易度は年々高くなってきています。
国はケアマネージャーの質の向上に力を入れていますから、ケアマネージャーになったから安泰、ではなく常に勉強を続け、提供するサービスの質向上が求められているといえるでしょう。
ケアマネージャーの求人・転職状況に関して
飽和状態になりつつあるケアマネージャー
2000年に介護保険制度がスタートして以来、ケアマネージャーの数は増え続けてきました。
そのため一旦ケアマネージャー不足は落ち着いていますから、まだまだニーズが高い仕事とはいえ、これまでのように「ケアマネージャーになればなんとかなる」という考え方は改めた方がいいかもしれません。
とはいえ、介護サービスの利用者は高齢化が進み、ますます多くなる点や施設介護が飽和状態にあり、在宅介護者が今後増える可能性がある点、サービス付き高齢者向け住宅など新たな高齢者向け住宅の増加などの影響で、就職先のバリエーションは広がってきています。
新規事業所から求められているケアマネージャーの存在
高齢化を受け、居宅介護支援事業所やグループホームなどの新規開設も増えていることを受け、こうした新規事業所がケアマネージャーの求人を出すケースも少なくありません。
居宅介護支援事業所はケアマネージャーなしには成り立ちませんから、新規事業所の開設動向などはチェックしておくといいでしょう。
経験者は転職・就職に有利
介護保険制度は定期的に改正されますから、常に第一線で活躍してきたケアマネージャーは即戦力として期待されています。 そのため、ケアマネージャーは全くの初心者よりも経験者が優遇される傾向にあります。
転職や就職する際にはケアマネージャー経験者は比較的有利といえますし、実際に採用条件に経験を求めるところも増えてきています。
とはいえ、探せば経歴いかんでも本人の人柄ややる気などで採用することもありますから、経験を積むためにも根気よく就職・転職先を探すことが大切です。
まとめ:介護保険制度のプロとして橋渡し役を担うケアマネージャー
ケアマネージャーは、介護保険制度を熟知し、地域の介護施設情報などの引き出しを豊富に持つ相談として、介護保険サービス利用者の生活を支えています。
利用者の元を訪れ、丁寧に利用者の要望や状況をヒアリングし、実際にケアプランの作成やサービス利用の調整を行う業務は決して簡単ではありません。
専門知識だけでなく、コミュニケーション能力や情報収集力、事務処理能力など幅広い力が必要なケアマネージャー。
これからも介護保険サービス利用者の大切な存在となりますから、活躍する場は広がっていくでしょう。