介護福祉士は、介護のスペシャリストである国家資格を取得した人材です。
介護福祉士という国家資格は1987年の制度制定で誕生した、それほど古くない資格です。
介護資格の中でも唯一国家資格として定められていることから、介護の仕事を続けながら資格取得を目指す人も少なくありません。
介護現場の第一線で活躍リーダーとして期待される上級資格保有者となる介護福祉士は、専門性の高い知識介護技術を期待して、在宅施設問わず介護の現場で求められていると言えるでしょう。
介護福祉士は、国家資格であることから簡単に取得できる資格ではありません。
平成27年度の受験者数は約15万2500人。そのうち合格率は57.9パーセントとなっており、合格率はここ3年で年々低下しています。(厚生労働省報道発表資料より)
介護福祉士の主な仕事内容と役割
介護福祉士の仕事は実際に現場で介護を行う仕事と、介護の知識を生かして生活相談員などとして活躍、もしくは管理者として働く仕事とに分けられます。
生活相談員や施設管理者になるとしても、介護福祉士で日常生活が困難になり身体介護を必要とする要介護者に対する介護をしたことがない人はそれほどいません。
実際に、介護の経験を生かして生活相談員、サービス責任者としてのキャリアプランがあると考えておく方がいいでしょう。
介護福祉士の業務その1:身体介護
介護福祉士の主な仕事の一つが、要介護者の食事や着替え、身体の衛生管理、排泄入浴などをサポートする身体介護です。
身体介護は、要介護者の介護度や性格、生活環境などにより異なりますから、豊富な経験が欠かせません。
また、身体介護にはベッドから車椅子への移動などのような移乗介助も含まれ、身体的に負担が大きいのも事実。正しい介護知識をつけることで、移乗介助でかかる腰への負担を軽減することもとても大切です。
介護福祉士の業務その2:生活援助
介護福祉士の仕事には、身体介護のように直接利用者の動きをサポートしたり、衛生管理を行う身体介助以外にも、できる限り自立ある生活を行うための生活援助があります。
訪問介護などの在宅介護サービスでは、特に家事援助は重要となっていて、利用者である要介護者の方ができる限り普通の生活を維持継続できるよう選択や掃除、食事の準備、買い物サポートなどを行います。
また、施設介護でもグループホームのように認知症高齢者に対して共同生活の中で自立支援などを行う場合は、生活援助もとても大切な業務となってきます。
介護福祉士の業務その3:相談アドバイス
介護福祉士の仕事は、要介護者へのサポートだけではありません。 介護サービスを利用する要介護者の家族からの相談は、生活に関するものから健康管理、実際の介護の仕方、福祉用具に関するものなど様々。
こうした相談に対して、介護の専門家としてしっかりとアドバイスすることも、大切な介護福祉士の仕事です。
介護福祉士の業務その4:社会活動支援
要介護になった方の多くは、元気だった頃と比べて社会的に孤立しがちな傾向にあります。
そのため、家族やコミュニティの中で要介護者が生き生きと生活できるよう、社会的な関わりを持てるよう支援することも介護福祉士の大事な仕事です。
ボランティア活動の紹介や外出支援、声がけなどさまざまな方法をとりながら利用者さんの生活に活力を与えることも介護度を進行させないという側面から求められているのです。
介護福祉士の1日のスケジュール
介護福祉士は老人ホームなどの入居型介護施設以外にも、デイサービスや小規模多機能型居宅介護、訪問介護事業所などさまざまな場所で仕事の場が広がっています。
当然、1日のスケジュールもどういった施設で働くかによって大きく異なります。
入所型介護施設ではたらく介護福祉士の場合
有料老人ホームや特別養護老人ホームなど入所型の施設で働く場合、利用者のケアや見守りを夜間も行う必要があるため、基本的にシフトを組んで仕事をすることとなります。
日勤と夜勤の勤務シフトのうち、日勤の場合は以下のようなスケジュールが代表的です。
7:30 | 出勤 |
7:45 | 夜勤スタッフとの情報共有申し送り |
8:00 | 利用者の起床着替えなどのサポート、朝食の食事介助 |
10:00 | レクリエーションや散歩などのサポート |
12:00 | 昼食の食事介助 |
13:00 | 休憩 |
14:00 | 入浴介助(一人ずつ) |
16:00 | レクリエーションの準備企画 |
18:00 | 入居希望者の対応、その後事務作業 |
19:00 | 帰宅 |
上記はあくまでも代表的な一例です。施設ごとのスケジュールや季節行事レクリエーションなどによりスケジュールは大きく異なります。
また、シフトによっては申し送りのための記録をするなどの事務作業も多く必要となりますから、入所型介護施設での仕事は忙しいものとなります。
訪問介護事業所で働く介護福祉士の場合
自宅で暮らす要介護者を訪問し、ケアマネージャーが立てたケアプランに従って介護サービスを提供する訪問介護は、事業所での勤務よりも圧倒的に外回りの時間が長くなります。
9:00 | 介護事業所に出勤チームミーティング |
10:00 | 利用者Aさん宅を訪問。朝食の介助と衣類などの洗濯 |
11:00 | 利用者Pさん宅を訪問。昼食準備食事介助 |
12:00 | 訪問ルートにある喫茶店でお昼休憩 |
13:00 | 利用者Hさん宅を訪問。入浴介助とお部屋の清掃 |
15:00 | 一旦事業所に戻り、新規の利用者についての打ち合わせ |
16:30 | 利用者Gさん宅を訪問。夕食準備と入浴介助 |
18:00 | 報告書を作成し、事業所にメールで送信、そのまま直帰 |
また、看取りケアを行っている際には、訪問看護師との連携もとても大切な仕事の一つ。
利用者の様子や体調によっては医療機関との連絡調整などを行いますから、業種を超えた関係者とのコミュニケーションもとても重要となってきます。
介護福祉士が働く職場と役割
介護福祉士が働く職場は、介護保健サービスを提供する事業所から、地域包括支援センターなどさまざまです。
大きく分けて介護サービスを提供する職場は「施設サービス」「居宅サービス」「地域密着サービス」があり、対象者は高齢者だけでなく知的障害や身体障害などの障がい者の方も含まれます。
施設サービス
主な施設の種類
- 有料老人ホーム
- 特別養護老人ホーム
- 老人保健施設など
主な役割
- 入居者に対して入浴、食事などの身体介護
- レクリエーション、体操、季節行事などの実施
- 館内清掃、環境整備
- 利用家族とのコミュニケーション
- 通院サポート
居宅サービス
主な施設の種類
- 訪問介護事業所
- デイサービスなど
主な役割
- 在宅生活する要介護者を訪問、身体介護や生活支援(訪問介護)
- レクリエーションやリハビリサポート(デイサービス)
- 身体介護、食事支援(デイサービス)
地域密着サービス
主な施設の種類
- グループホーム
- 小規模多機能型居宅介護など
主な役割
- 認知症高齢者の生活支援、身体介護(グループホーム)
- 利用者の自立支援
- レクリエーションなどの実施
- 利用者家族への連絡、情報共有
介護福祉士の年収給料賞与
介護福祉士の給料は、全産業の平均と比べると低い水準を推移しています。
仕事内容は決して楽な仕事ではありませんから、ハードな職務内容と待遇が釣り合っていないという声が多く上がっているのも事実です。
正規職員で働くか、非正規職員として働くかによって給与は異なりますが、厚労省が発表している平均賃金と全産業平均は以下の通り。
- 介護福祉士:23.65万円
- 介護職員初任者研修修了者:21.21万円
- 無資格者:19.64万円
- 全産業平均:23.82万円
※平成25年度介護労働実態調査より
年収にしてみれは、介護福祉士は単純に23.65万円×12か月で283万円。1~2か月分のボーナスが出たとしても300万円前後の年収となります。
また、平成27年度の介護労働実態調査からは、資格を問わず介護職員のうち月給で給与を受け取っている人の平均給与は19.86万円。
最近では、政府が介護人材確保に向けて待遇改善に向けた政策が進み待遇改善が進んでいるようですが、あくまでも正規職員の話。非正規の場合は、待遇も若干下がることは否めません。
また、ボーナス事情についてですが、中には低賃金でボーナスが出ない事業所もあります。
事業所によって給与事情は大きく異なりますから、転職する際には、ボーナスの有無などを事前に確認しておく必要があると言えます。
介護福祉士を取り巻く環境と将来性
高齢化が急速に進む今、介護福祉士に対する需要はとても高くなっています。
2000年の介護保険制度開始から、介護の国家資格を持つ介護福祉士への期待は決して低いものではありません。
専門家として、また現場でのリーダー的な存在として採用する側も介護福祉士への期待は大きいものとなっています。
また、国は介護報酬改正などを通じて、介護職員の中で一定の割合以上の介護福祉士を配置している施設に対して、介護報酬加算をしています。
事業所にとっては、介護福祉士の存在が収益アップにもつながるわけですから、積極的に採用をしたいと考えているところが多いのは事実。
ただし、ニーズがある一方で介護職員の離職率の高さも問題となっています。
離職率の高さは、給与勤務時間などの待遇面で給与に見合わないハードな仕事であることが原因とされていますから、決して楽な仕事ではないことを物語っています。
社会的に求められている人材であることから、ニーズは今後ますます高くなると予想されているとはいえ、給与面での課題や体力的に大変な仕事でありますから、志を持って仕事に取り組めるかが、長く続けられるかのポイントとなるでしょう。
介護福祉士の求人転職状況に関して
介護福祉士の求人状況
介護福祉士として転職や就職を考えている方にとって、高齢化を迎えた今は比較的簡単に仕事が見つかるといえます。
平成27年度の介護労働実態調査では、介護事業所に対して従業員の過不足を問う設問で、「不足」を感じている事業所は平成26年度と比べて2ポイントアップの61.3パーセント。
不足の理由として「採用が困難である」と回答している事業所が全体の7割を占めています。
雇用形態や賃金などにこだわらなければすぐに職場が見つかるとはいえ、当然給与面や労働環境、人材育成などをしっかりと整えている事業所の人気は高くなっています。
介護福祉士への転職について
介護職は今求められている人材ということもあり、介護福祉士として転職を考えている人も多いかもしれません。
養成施設を卒業して介護福祉士の資格を得る以外に、介護福祉士になるには「福祉系高校を卒業」もしくは「3年以上の実務経験」を経て国家試験を受験。
合格することが必要ですから、他業種からの転職の場合、キャリアプランとしてはまず介護職員初任者研修を受け、介護施設に就職。その後キャリアアップの一環として介護福祉士の資格を取得することが一般的です。
介護の仕事は人材不足が深刻な状況ですから、介護のプロとしての知識経験を持つ介護福祉士として転職活動をすれば仕事は簡単に見つかりますが、覚えておかなければいけないのが介護という仕事の大変さ。
心身ともに非常にハードでありながら、待遇面が見合わないことから離職率が高い介護職。介護の世界に足を踏み入れたいと思っているなら、こうした状況をしっかりと認識しておきましょう。
まとめ:ますますニーズの高まる介護福祉士
介護のプロとして、国家資格を持つ介護福祉士は、これからの時代まさに必要とされている人材です。そのため、就職や転職は決して難しいものではありません。
介護職の仕事は心身ともにハードなことが多い反面、待遇面ではそれに見合わないとの声も多く、離職率が高いのも事実です。
介護福祉士として活躍を考えているなら、こうした介護の現場や現状をしっかりと把握しておく必要があると言えるでしょう。