高齢化が進む今、定年を迎えてもまだまだ現役として働く人が増えています。
老後の生活不安や、生きがいある暮らしのために仕事を続けるという選択をする人も多い中、介護職の定年事情はどのようになっているか、気になるところですよね。
介護業界では、高齢者だからこそできる介護への期待や、人材不足解消などを目的に60歳定年制を撤廃する施設が少しずつ増えてきていると言われています。
公益財団法人が発表している「
」では介護職員の平均年齢は46.3歳。中でも訪問介護員の平均年齢は53.0歳となっていることから比較的高齢になっても活躍しやすい環境であることが伺えます。
また、同調査の年齢構成を見てみると、定年後となる60歳以上で働く人は全体の18.9パーセント。特に訪問介護サービス分野では33.6パーセント、グループホームでは22.7パーセントの職員が60歳以上となっています。
こうした統計からも、介護職は高齢になっても活躍できる職場であることがわかります。
1.介護職の定年制度
介護業界では今、60歳定年制の廃止や継続雇用制度を活用した定年後の人材活用が進んでいます。
慢性的な人手不足により、外国人労働者の投入なども検討されていますが、コミュニケーションが大切となる介護職。高齢だからこその人付き合いのスキルなどへの期待もあり、定年後70、80歳になっても現場で働くケースが少なくありません。
特に、訪問介護の現場では非常勤社員でも定年制度を設けていない企業も多く、一般社団法人日本在宅介護協会が実施した「平成21年度在宅介護サービス業高齢者雇用に関するアンケート調査」では非常勤社員の場合42.5パーセントの事業所が定年制度を設けていない実態が明らかになっています。
2.定年後の再就職の現状
介護職として働いている方にとって、「いつまで働き続けられるか」という問題は、人生設計にも大きく関わる事柄です。
定年後の再就職先としてまた介護職を選ぶのであれば、再就職は比較的容易と言えます。
団塊の世代が後期高齢者となる2025年を前に、介護人材の不足は深刻な状況です。こうした状況を受け、国では「離職した介護人材の再就職準備金貸付事業」を2016年度からスタート。
介護福祉士や介護職員初任者研修などの有資格者で、介護職員としての実務経験1年以上などの条件があれば就職順費用として上限20万円が貸付られるこの制度。
制度利用には年齢条件がありませんから、定年後、介護の仕事にカムバックしたいと考えている方も、大いに活用できる制度です。
3.介護職員の退職金
介護業界で何年も働き続ければ、当然気になるのが退職金。定年後も働ける業界ではありますが、定年で退職するとすれば老後の備えに退職金が当てられれば安心ですよね。
介護職の退職金の相場はいったいどのくらいか、退職金制度はあるのかを見てみましょう。
1)退職金制度がない事業所・施設も意外と多い!?
介護業界に限った話ではありませんが、退職金制度を設けていない事業所や施設は意外と多いのが現状です。
介護事業所が医療法人か、社会福祉法人か、はたまた民間法人かによってもその事情は大きく異なりますが、民間法人の場合は正規・非正規を問わず退職金制度があるところはそれほど多くありません。
一方、医療法人や社会福祉法人の運営している介護施設では、公費負担の元で「社会福祉施設職員等退職手当共済制度」を導入しているところが多く、月々数千円の掛け金で退職金のための積み立てができる場合が多くあります。
「社会福祉施設職員等退職手当共済制度」は非正規でも雇用条件・労働時間などから加入要件が満たせると判断できる場合には加入できますから、転職・就職の際にはチェックしてみるといいでしょう。
2)介護職の退職金相場
あなたの勤める(勤めようと思っている)職場で退職金制度があるとして、いったいどのくらいの退職金がもらえるのかはきになるところですよね。
もちろん、職場の制度によって退職金は異なりますが、相場としては「勤務年数×10万円」程度。
(例)社会福祉法人の運営する老人ホームに40年勤務した場合
退職金=勤務年数40年×10万円=400万円
一般の大手企業と異なり、40年勤務しても400万円というのは、意外と少ないと感じる方もいるかもしれませんが、介護業界ではもらえるだけでもありがたいところ。
退職金がない場合には、老後に向けてコツコツと積み立てをしたり、貯蓄型の保険に加入するなど対策を取っておきましょう。
4.再就職するための方法
1)勤務延長制度
定年制度のある職場で介護職として働き、定年後も働きたいと思った場合、まず最初に考えられる方法は「勤務延長制度」の活用です。
一般社団法人日本在宅介護協会が平成22年度に発行した「在宅介護サービス業高齢者雇用の手引き」では、在宅介護サービス業における高齢者雇用の現状を調査した結果がまとめられています。
60歳以上でも働く人が多い訪問介護職ですが、同調査では、定年制度を導入している企業の約8割が何らかの継続雇用制度を導入しています。
なかでも勤務延長制度は正社員の23.7パーセント、常勤社員の30.2パーセント、非常勤社員でも27.5パーセントの企業が導入している制度となります。
2)再雇用制度
定年後も働き続けるための方法としてもう一つ活用できる制度としてあげられるのが「再雇用制度」です。
「高年齢者雇用安定法」によって、各企業には①定年制度の撤廃、②定年を65歳まで引き上げる、③定年後再雇用制度を導入する、のいずれかを実施することが義務付けられています。
また平成25年以降は継続雇用を希望する人すべてに65歳までの再雇用が義務付けられていますから、勤務形態や職務内容に応じた新たな労働条件のもと、再度雇用契約を結ぶことが可能です。
3)転職サイトを利用する
定年後も働き続けるもう一つの方法は、転職サイトの利用です。
高齢者雇用は、人事担当者から見ても「人生経験や生活経験が業務に生かせる」「経験と能力ある即戦力が雇用できる」ことなどメリットが多いと認識されています。
また、利用者との世代が近いことからも、コミュニケーションが若い人よりも取りやすいと一般的に捉えられています。
こうした理由から、転職サイトでも60歳以上歓迎の求人は雇用形態を問わなければ数多く見つけられます。
正社員としての求人も少ないながらありますから、こまめにチェックして気になるところには問い合わせや応募をしてみるといいでしょう。
5.60歳以上の求人動向・情報
ここまで見てきたように、介護業界は、高齢になってからでも働ける、仕事を続けられる業界の一つです。
そのため、「60歳以上歓迎」を謳う求人情報は比較的簡単に見つけられます。
2014年にユーキャンが実施・発表している「60代の資格取得に関する意識調査」では、60代で取得した資格の第1位に介護ヘルパーがランクイン。また、介護福祉士も第9位とトップ10入りをしていることからも、60代以降、介護業界での仕事を続けようとスキルを積んでいる方が多いことがわかります。
ただし、60代を超えると求人は正社員よりも非正社員求人が多くなってきます。パートやアルバイトとして働くことも視野に入れておくべきと言えるでしょう。
まとめ:退職金は少ないけれど…介護業界は定年度も活躍しやすい業界
政府が一億層活躍を掲げ、高齢者雇用の活性に乗り出す施策を打ち出している中で、介護業界は高齢になっても活躍しやすい業界のひとつです。
対象となるお客様(利用者)が高齢であることから、年齢の高さが業務上の強みにもなりうる介護職。
ただし、体力的に大変な入浴介助などの身体介助や夜勤は若い頃のようにできないことを考えると、若いうちから介護職としての経験を積み、資格取得などをすることでスキルアップを図っておくことも大切です。
記事のまとめ
介護業界では60歳以上で活躍する人が全世代の19パーセント近く。
特に、訪問介護ヘルパーは3割が60歳以上
定年制度や退職金制度がない事業所・施設が多い
退職金制度がある職場の退職金相場は「勤続年数×10万円」
定年後も働き続けるための「再雇用制度」や「勤務延長制度」の活用がオススメ
60歳以上歓迎の求人数は意外と多い