私たち介護の現場で働く、あるいは、これから働こうと思っている人は、普段の何気なく生活していても、簡単には感染症にかからないようにできています。
それは体の免疫機能(防御機能)が知らず知らずのうちに働き、様々な病原菌から私たちを守ってくれているからなのです。
しかし、介護施設などに入所されている方達の殆どは高齢であり、若い頃の持っていた免疫力(抵抗力)が低下している方達が多いのです。
ここでは介護施設における感染防止の基本的な考え方とその予防策について触れていきたいと思います。
感染防止の基本的な考え方について
みなさん、なぜ介護の現場において、感染防止対策は必要となるのでしょうか?
介護施設において、ひとたび感染症が蔓延してしまうと、その施設の入所者だけでなく、介護施設にとっても経営上、大きな負担が生じてしまうのです。
また、感染している入所者から、別の入所者への感染も防ぎ、さらにはそのご家族への伝播をも防ぐことが大切です。
そして、私たち介護職員自身を感染から守るとともに、私たち介護職員から入所者への感染の伝播を防ぐ必要性もあるわけです。
そのためにも、介護施設における感染防止対策は必要となってくるということです。
病原体となる細菌やウイルスなどは、どこにでも存在しており、これらを完全に絶滅させることは不可能なことです。
また、介護施設に入所されている方たちの多くが高齢者であることから、ご自身の免疫力(抵抗力)を高めることも容易にはできないのです。
ですから、私たち介護にたずさわる職員が、しっかりとした感染予防対策を行い、感染経路の遮断と入所者の保護を行うことが非常に大切となるわけです。
介護の現場における標準的予防策について
次に感染症を未然に食い止めるための標準的予防策についてお話しします。
まず、感染経路には大きく分けて「空気感染」・「飛沫感染」・「接触感染」の3つの経路があります。ここではどの感染経路にも共通する標準的予防策についてご紹介したいと思います。
まず、入所者の方の湿性生体物質(血液・体液・分泌物・排泄物・汚染物)で衣服が汚染されている時、または、汚染されている可能性がある時は、介護職員は予防着を着用しましょう。
また、入所者が、インフルエンザなどの重傷飛沫感染症に感染している、もしくは、感染している可能性がある時は、介護職員は必ずマスクを着用しましょう。
そして、入所者の湿性生体物質に触れる時は必ず手袋を着用し、また、手袋の着用の有無にかかわらず、必ず手洗いを行いましょう。
また、一度入所者に使用した器材等を再使用する場合は、適切に洗浄および消毒をするまで、別の入所者には絶対に使用しないでください。そして、ベッドやベッド柵などは入所者が触れることが非常に多い部分です。
それらに対し、毎日環境整備を行い清潔な状態を維持してください。リネン類が汚染してしまった場合は、速やかに新しいものと交換し、汚染されたリネン類は適切な方法で消毒・洗浄をしてください。
介護の現場における感染経路別予防策について
先程も少し触れましたが、感染経路は大きく分けて3つに分かれます。
ここでは、感染経路別の予防策について触れていきたいと思います。
1、空気感染予防策」(感染性の肺結核など)
- 介護職員が入所者の部屋に入室する時は、N-95と呼ばれるマスクを必ず使用してください
- 入所者を部屋から出す際は、必ず入所者にマスク(この場合はサージカルマスクで結構です)を装着させてください
- 入所者の痰などは、感染性廃棄物として、専用の容器に捨てるようにしましょう
- 入所者の部屋を掃除する時は、特に消毒する必要はないです
- 介護職員がガウンなどの予防衣を着用する必要もないです
- 入所者が退室した後は、窓を2時間ほど開放してください
- 特別な清掃は必要なく、一般的な清掃を行って下さい
2、飛沫感染予防策(インフルエンザやマイコプラズマ肺炎など)
- 基本的に、飛沫感染症の入所者は、他の患者とは別に個室に入室させてください
- 介護職員が、入所者から1m以内の範囲内に接する時は、必ずマスクを着用してください
- 入所者を部屋から出す際は、必ず入所者にマスクを装着させてください
3、接触感染予防策」(MRSAや疥癬など)
- 基本的に、接触感染症の入所者は、他の患者とは別に個室に入室させてください
- 介護職員が部屋に入室する際は手袋を装着し、退出する際には手袋を専用の容器に捨てて下さい。また、入室する際にはガウンなどの予防衣を着用し、退出する際には脱いでください
- 接触感染症の入所者に使用した器具等は、その入所者専用として使用し、他の入所者には使用しないでください
まとめ
介護の現場における感染・衛生管理についての予防策を中心に解説させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。
私たちのからだは、普段知らず知らずのうちに感染源となる病原菌と戦い、感染症を発症することはあまりありませんが、介護施設に入所されている方の場合、ほとんどが高齢者であり、また、免疫力の弱い方達ばかりです。
日頃の勤務で、きちんとした感染・衛生管理対策を行い、入所者の方を病原菌から守りましょう!